笑福亭昇瓶のほっかほかラジオ 朝の聞くサプリ


トーク内容です。※笑福亭晃瓶さん=晃   古橋悦子=悦

 

はじめに:『ほっかほか今朝の聞くサプリ』でございます。今日は「絵本にそっと閉じ込める、あなたが歩んできた道のこと」という話題です。

 

晃:タイトルだけではわかりづらいと思いますので、詳しく伺いましょう。京都の聞き書き絵本の古橋悦子さんとお電話がつながっております。 もしもし。

 

悦:もしもしおはようございます。

 

晃:おはようございます。よろしくお願いいたします。京都の聞き書き絵本の古橋さんとご紹介させていただいたのですが。どういうことでしょうか。

 

悦:依頼があった方のお話をじっくり伺って、その方の自分史、お話を文章にして絵本とかにするという、そういう活動です。

 

晃:まず依頼があって。その方の自分史、自分をふりかえって、今までにどういうことがあったというお話をずーっと聞かれて。まずそれを文章にされるのですか。

 

悦:はい、そうです。

 

晃:文章にされて、それを絵本ということですけれど。いろいろイメージされて絵本にされるということですね。これ、とても大変な作業じゃないですか?

 

悦:(笑) そうですね。はい。お年寄りの方が多いのですが、お話を全部聞いていたらすごく大変だなって思われると思うんです。

 

晃:そうでしょうね。時代もいろいろあったやろしね。

 

悦:はい。果てしない感じがするときもあるのですが。実はただ聞くのではなく、少しずつ進めていくのですが、お話を伺ってそれを文章にして、またそれを読んでいただいて、違うところをなおしながら進めるのですが。「ただ(話を)聞いてもらった」ではなく、こういう風に理解してくれたのだということで、消化できていくというか。果てしないと思っていたお話が、ぱっと頂点に達して、満足されて。そこからまとめに入る、ということが多いです。

 

晃:なるほどね。年齢にもよるかもわかりませんけど。ふりかえった話って、そりゃ、一日で終わらへんほど長い方もおられたり。中には人にものを伝えるのが苦手な方もいてはったら、ポイントだけポンポンポンって言われても難しいかもしれませんし。そのあたりは、事細かに聴かれるのですか?それともなんとなくポイントポイントで? ドラマやと、なんとなくここが一番ええとこやなぁとかイメージできますけど、人の話って、人の人生ですから。ここも大事、ここも大事って大事なとこだらけですから。それを言葉にして絵本にしようと思うと。山場があったり。ここは人に聴いてもらおうとか。そのへん難しくないですか?

 

悦:さすが、(昇瓶さんは)たくさんの人に接しておられるので、そう思われると思うのですが。意外に一番最初に一番大切なことが出てくることが多いんですよ。

 

晃:あ、そうですか。まずそういうところからお話をされるんですか。

 

悦:そうですね。(古いことから)順番に話そうとする人もいるのですが、整理は私がやるので、一番話したいところから話してくださいとお伝えしています。

 

晃:うわ~それは大変やわ。時代もばらばらになるじゃないですか。

 

悦:それを整理していくんです。だから順番を整理するのが私の仕事という感じで。意外に、一番最初の打ち合わせのような時に、神髄がぼーんと出てくることがすごく多くて。その時からボイスレコーダーは持っていくようにしています。

 

晃:なるほど、録音しながらお話を伺っているわけですね。あとから何度もききなおして文章におこして。うわ~それは大変なお仕事ですね。それを絵本にするのも古橋さんなんですか?

 

悦:基本、私が一人で活動していますが、人の手をすごく借りていまして、絵は夫が描いています。

 

晃:ご主人ですか。得意でいらしゃるんですか?それともそういうお仕事をされているんですか?

 

悦:いえいえ、(絵の)プロではないんですけど。絵を描くのが好きなので。いろいろこちらからこんな感じでとか。この写真を見て書いてとかいろいろいってかいてもらってます。

 

晃:それはご結婚されるときに、絵が上手だから一緒にならはったわけじゃないでしょう?

 

悦:そこまで考えてませんでした(笑)

 

晃:そうですよね。それはたまたま、そういう方向になっていたのかもしれませんね。

 

悦:そうですね。

 

晃:ご夫婦で一緒にそういうことができてですね。ご主人も嫌がらずに絵を描かはるわけでしょう。協力したいという思いで。自分も絵を描くのがお好きだからというのもあるでしょうけれど。その絵に古橋さんご自身は満足されているのですか?『あなたちゃうやん!ここもっとこうしてよ!」とかそれはないですか?

 

悦:(笑)そのへんは、いいやすいですよね。なんかこの絵、似てへんやん、とかね。

 

晃:(笑)そうでしょ! どこかに発注して、違うとはいいにくいし。でもご主人やから日頃生活も一緒にされてたら。古橋さんの感覚もおわかりやから。きっとこのへんはこうした方が気に入ってくれるんちゃうかなとか。意思疎通ができてるんちゃいますか。

 

悦:それはそうかもしれませんね。

 

晃:ええご夫婦ですね。もめることないでしょう。

 

悦:どうでしょう (笑)

 

晃:(笑)もめたら 絵にでますやんか。気悪いこといいよったわ~っていったら。絵にでませんか?

 

悦:確かに、これが私の夢でやってきたことなので。夫がいないとできないことだから。大切にしなくちゃいけないなとは思ってますね(笑)

 

晃:ご主人の協力をえながら。お話をきいてと。ご年配の方が多いわけですか。

 

悦:はい、多いのはそうなんですが。ご本人というだけではなくて。自分のご両親の話をきいてほしいとか。例えば(親が)施設に入っておられて。認知症もあって。でも職員さんに(親が)こんな人生を歩んできた人だと伝えたいんだけれど。忙しくて分厚い自分史は読んでくれないし..というときに、わかりやすい絵本だと、「こんな人だった」ということが伝わって良かった、ということもありますし。あと、障害があるお孫さんのために、お孫さんについてたくさんの人に知ってほしいからと、絵本を作る人もおられます。

 

晃:ご自身のことだと思いこんでいたけれど。ご両親のことやったり、おじいちゃん、おばあちゃん、子どもさん、お孫さんというのもね。今までお聞きしててね。おじいちゃん、おばあちゃんのことをそうして残しておくと。これから先、お子さん、孫、ひ孫さんと続いていったときに。(絵本が)残っていたら。うちのひいひいじいちゃん、こんなんやったんやとか。何年か後に、それ読まれたらわかるじゃないですか。それって今まであったようでなかったですよね。

 

悦:そうですね。ちょうど六十歳代くらいでご両親の介護をしながらお孫さんの面倒もみているという人ってけっこう多くて。(そういう人が、親の絵本を作れば)孫にもわかりやすいし、というのもありますね。

 

晃:自叙伝とか、文章で書く人もいはりますけれど。これね、ちょっとあまり分厚いと、拒絶するんです。でもこれは絵本でしょ。

 

悦:はい。絵本だけじゃなくて、四コママンガだったり。「私は自分史がいい」という人もいます。写真をいっぱいにしたり。いろいろあります。

 

晃:読むというか、絵でみるというのはとてもインパクトがあるし。ご主人がやさしい感じで描いていただければ。絵のやさしさも伝わってほんわかすると思うのですが。特に気を遣うところってどんなとこですか。

 

悦:そうですね...。十年間はボランティアでやっていてから、十年前に起業したのですけれど。ボランティア時代は自分からお願いしていたので。聴かれたくないことがあるんじゃないかな?というのは気を遣います。ご自身で言いたい人はいいんですけれどね。

 

晃:プライバシーのことがあるからね。聴きたいなと思っても。あんまり聴くと失礼かなと。

 

悦:そうですね。ついついしゃべってしまって、それはあとで「ここは削っといてください」ということはあったりしますね。

 

晃:ということは、聴いて文章にして絵本にされていくというあいだに、何度か打ち合わせもしながら進めていかれるわけですか。

 

悦:はい、そうです、そこが大切だと思っていて。これでいいですか?と見ていただきながら。絵も見ていただきながら。「これは違うよ」っていうところでまた話が深まっていく。

 

晃:ご自身、自分たちのことだから、ちょっとでも違ったら違和感がありますもんね。では依頼があってお話をきいて。文字におこして絵本にできあがるまで、時間はどのくらいかかるですか。

 

悦:それはそれぞれです。その過程を楽しまれる人は一年以上かかることもありますし。記念日のためにとかあと何か月とかもありますし。ご病気で余命があまりないという人で急がれる人もあります。

 

晃:いろんな立場の方でかける時間もかわってくると。どうですか、古橋さんご自身は、時間をかけた方がよいのかな? 僕は時間をかけた方がいいものができる気がします。

 

悦:そうですね。そのあたりも人によりけりですね。あまりパンパン早すぎるとよくない場合もありますし。私は手抜きをしないでじっくり取り組みたいと思っています。

 

晃:これ出来上がって初めて手にされたときの感覚、驚きってどんなもんでしょう。

 

悦:それが、私自身が一番緊張する時。思いにかなっているものができているかな?と。完全に出来上がる前に見本の段階で見ていただくのですが。これは違うっておっしゃったら一からやり直す覚悟で見ていただくんです。で、「(私が欲しかったのは)これです!」と言ってもらえたら本当にうれしいので。喜びが共有できるというか。

 

晃:依頼された方が想像していた以上のものが作りたいなぁと思われるんじゃないですか。

 

悦:そうですね。多分一冊一冊がいろいろなので。(最初に)サンプル見本をお見せしても自分がどうなるのかわからないわけで。だからはじめて形になったとき、「あ、(私の本は)これや!」って思っていただけるようにがんばろうと。

 

晃:ちなみに今までどのくらいの本を作ってこられたのですか。

 

悦:えっと、50冊くらいですね。本だけでもなくいろいろあるので。

 

晃:その中で特に印象に残ってはるかたとかありますか?

 

悦:そうですね....うーん...

 

晃:ひとりやふたりやないでしょう。どうでしょう。聞き取りしながら一緒に泣いてしもうたとか。あったりするんじゃないですか。

 

悦:そうですね、それはありますね。

 

晃:そういうところからスタートするからこそ、向こうも心を開いて、よりいいものができるような気がするんです。あと仲良くなるんじゃないですか。自分史を語られたら。その人のことそんなに知らんかったけれど。詳しくなって。昔から知っているみたいになりませんか?

 

悦:それはそうですね。だからそのあともつながりが続く人が多いですね。

 

晃:ぜひみなさん、そういうことを思っている人は訪ねていかれたらいいと思います。これなんか、記念展、二十周年の記念展ですか?近々されるそうですが。どういうものですか。

 

悦:12月7日から13日まで、左京区恵文社のギャラリーなんですが。そこで初めての個展なんですけれど。絵本の展示をします。このために、絵本の装丁を上製本で手作りしてくださる人が見つかって。野口聡子さんという方なのですが。私はずーっと中身は手作りですから外も手作りしたいとずーっと思っていたのですが。なかなかそこまでできなかったのです。今回全部手作りで。またそれに、お父様が京都の伝統工芸士だったという人から、京友禅の端切れをたくさんたいだき、それをあしらった絵本になっています。ひとつひとつが世界に一つしかない絵本。もし見ていただけたらうれしいです。

 

晃:その絵本は、ご主人がかかれた絵ですよね。じゃ、ご主人 来られたりしますか?

 

悦:どうなんでしょう?(笑)

 

 

晃:その絵から、どんなご主人かも想像できるかもしれませんね。合わせて楽しんでください。